2020年8月28日の金曜ロードショーで放送のジブリアニメ「借りぐらしのアリエッティ」のネタバレ考察をご紹介します。
※誤って今回の映画「借りぐらしのアリエッティ」のネタバレ考察記事に来てしまった方、ネタバレや考察自体が苦手な方はお戻りください。
借りぐらしのアリエッティ 相関図
「借りぐらしのアリエッティ」の人物関係図を作成しました。
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借りぐらしのアリエッティ 登場人物 声優
アリエッティ 声 – 志田未来
翔 声 – 神木隆之介
ホミリー 声 – 大竹しのぶ
ポッド 声 – 三浦友和
スピラー 声 – 藤原竜也
貞子 声 – 竹下景子
ハル 声 – 樹木希林
羽鳥慎一
吉野正弘
借りぐらしのアリエッティ あらすじ
父・ポッド(三浦友和)、母・ホミリー(大竹しのぶ)と三人で暮らす少女アリエッティ(志田未来)は、郊外の古びた一軒家の床下で、人間から様々なものを「借り」て生活する小人だった。
ある日、アリエッティたちが暮らす家に病気を抱える少年・翔(神木隆之介)がやってきて、アリエッティは「借り」をしているところを見つかってしまう。
この家から引っ越すかどうか考えるアリエッティたちだったが、翔はおとぎ話だとおもっていた小人の存在を実感し、会いたいと思うようになる。
そんな中、アリエッティは翔の様子を探りに再び近づいていく。
網戸越しに自分達のことは見なかったことにしてほしいと頼む。
その最中、カラスのがやってきたことで家政婦のハル(樹木希林)にも存在を感づかれてしまう。
一方、翔の家にあるドールハウスが、曽祖父が小人達のために注文したものだったということが分かる。
そんな中、スピラー(藤原竜也)とともに引越し先を探していたポッドは、他の仲間の存在を確信すると同時に、住み慣れたこの家を出る決断を下すのだった。
そうとは知らない翔は、アリエッティたちに新しい家をプレゼントしようと床をはがしてドールハウスを設置してしまう。
せっかくの好意を無にされた翔は、姿を現したアリエッティに対して残酷な言葉をかけてしまうが、自分がドールハウスを置いたことが小人たちにとっては迷惑だったことを知り、謝罪する。
そして、自分は助からない心臓の病気だと明かす。
そんな時、翔が小人と接触するのを待っていたハルによってホミリーが捕獲されてしまう。
翔は、ホミリーが捕まったことを知り、アリエッティとともに台所へ向かい、瓶の中に閉じ込められていたホミリーを救出。
その後、アリエッティたちは川を下って新居へ向かうことに。
アリエッティへ最後の別れを告げるため、川にやってきた翔は、贈り物を交換して、互いに生きていくことを誓い合うのだった。
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「借りぐらしのアリエッティ」ネタバレ考察
※ストーリーの結末に触れる部分がありますので、ネタバレしたくない方は読まないでください。
翔の手紙の内容
翔は、アリエッティが落としていった角砂糖を彼女が回収できるようにするため、「わすれもの」と書いた紙を添えて、通風孔の前に置いていきます。
その後、翔は、再び手紙を書いて花を添えてアリエッティに渡そうとします。
しかし、この手紙の内容は本編では明かされていません。
何と書いていたのか気になったという視聴者も多いのではないでしょうか。
手紙の内容について、翔の前後の行動から予想すると、「話がしたい」とか「会いたい」などのアリエッティへの興味関心についての内容か、
もしくは「こんにちは」などの単純な挨拶だけを書いて、少しずつ交流を深めていこうと考えていたのかもしれません。
いずれにしても、「アリエッティと友達になりたい」という自分の好意的な意志を伝えるための言葉を文字にして手紙に書いたのではないでしょうか。
なぜ翔は酷いことを言ってしまったのか
翔は、友達になりたがっていたアリエッティとせっかく会うことができたのに、「君たちは滅びゆく種族なんだよ」とか「絶滅する運命」とか、ひどい言葉を並べています。
なぜこのような言葉を口にしてしまったのでしょうか。この時の翔の心境を考察してみます。
翔は、病弱で自由に生きることができない自分と、床下での窮屈な生活を強いられている小人たちを重ね合わせ、辛い境遇を慰め合える存在だと考えていました。
そして、小人たちを助けてあげたいという親切心からキッチンをプレゼントします。
翔からすれば、絶対に喜んでもらえるはずだと思っていたでしょう。
「気に入ってくれた?」という言葉からは、その気持ちが感じ取れます。
しかし、アリエッティから予想外の答えが返ってきたことで、翔は自分の気持ちを踏みにじられた、仲間だと思っていたのに裏切られたと感じたのです。
好意を無にされて怒りや悲しみが溢れてきた翔は、その感情に任せてアリエッティを突き放したい衝動に駆られ、ひどい言葉を言ってしまったのです。
一方、アリエッティからすれば、翔の行動はあまりにも配慮に欠ける非常識なものでしかありません。
自分のことを何も知らないのに、いきなり高価なプレゼント(キッチン)と自宅のリフォーム(というかほとんど破壊)をされても、嬉しいどころか迷惑だし、恐怖を感じたとしても無理はありません。
ただ、12歳という年齢を考えれば、このような相手の立場に配慮しないコミュニケーション力の未熟さがあることは当然です。
こういった失敗を繰り返し、傷つきながらも他者との信頼関係を構築していくことで、大人としての社会性が身についていくわけですね。
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原作との違い
「借りぐらしのアリエッティ」は、イギリスの作家、メアリー・ノートンによる児童向け小説「床下の小人たち(原題:Borrows)」が原作です。
原作小説「床下の小人たち」は、小人の名前や「借り」くらしをしているという設定は同じですが、その他の登場人物やストーリー構成はかなり違っています。
最も大きな違いとしては、原作がミステリーの要素を含んだ作品だったということです。
というのも、原作では、アリエッティと出会ったという少年の話を、その少年の姉が、ケイトという少女に「弟から聞いた小人たちの話」として語っていくという構成になっているのです。
そのため、読者は「この話は本当なの?それとも姉、もしくは弟の作り話なの?」と疑いながら読み進めていくことになります。
姉は、「小人たちはあんなことをやった、こんなことやった」と、存在を示す証拠らしいことをもっともらしく語っていくのですが、どれも決定的な証拠になり得ないものばかりです。
それでもよくできた物語の筋書きに、読者が姉を信じて「小人はいるんだ」と思い本を読み終えようとするその時、小人の存在を疑わざるを得ないある一言で物語は締めくくられているのです。(このラストの大どんでん返しは、ぜひ原作を読んで確かめてみてください)
個人的には、この大どんでん返しは、サスペンスミステリーの傑作映画「ユージュアルサスペクツ」に似た作りだと感じます。
なので「借りぐらしのアリエッティ」は、ミステリーの要素を含んだ原作ストーリーをそのままで映画化していたとしても、ヒットした可能性はあると思います。
ちなみに「借りぐらしのアリエッティ」の監督を任された米林宏昌監督が、次回作に選んだのは、原作のミステリーの要素を残したままの作品「思い出のマーニー」でした。
しかし宮崎駿監督は、この原作の肝ともいうべきミステリーの要素を大胆にカットし、登場人物を変え、テーマを現代風にアレンジした上で大幅に脚本を書き換えるという選択をしています。
宮崎駿監督が映画公開にあたり語った内容から読み取ると、テクニック的なミステリーの要素などなくとも、この「床下の小人たち」に込められた本当のテーマである「借りぐらし」をもっと深く掘り下げて描くことで、今の時代の人々から多くの共感を得られる作品に仕上げることができる、という確信があったのだと思われます。
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「泥棒じゃない借りだ」意味
「泥棒じゃない、借り」だと言った翔の言葉には、こんな意味がこめられていると思います。
この世の中で人間所有しているものなのど何一つない、この世に生き物はすべからく共存共栄で成り立っている。
そう考えると、この心臓だって、自然界に存在する作物や動物を食べ、水を飲み、空気や光を受けているから動いているんであって、それらの「恩恵=借り」があるからこそ生かされているんじゃないか。
自然は人間の所有物ではない。そう考えれば人間が所有しているものなど何一つない。
自分もアリエッティと同じく「借りぐらし」をしているのだ、と感じたのではないでしょうか。
君は僕の心臓の一部だ
エンディングで、「君は僕の心臓の一部だ」と言ったのは、アリエッティとの交流を通じて、生きる希望が持てたことで、心臓の手術をする勇気が湧いたということがあります。
しかしそれだけではありません。
翔は、この心臓が動いている、自分が生きていられるのは「借りぐらし」をしているからだと気づきました。
そして、アリエッティたち小人が絶滅せずに生き残ってくいくということは、「自然界の借りぐらしサイクル」が途切れずに回っていることの証明となります。
つまり、彼らが生きているうちは、自分の心臓も「借りぐらし」ができる。
だから、アリエッティが生きていることと自分が生きていることとは同義という意味を込めて「君は僕の心臓の一部だ」と言ったのではないでしょうか。
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